Menu

Mobile navigation

景色と料理を楽しむ、鹿児島 3 泊 4 日の旅

関東近郊での気軽な旅行も悪くないけれど、たまには飛行機に乗って、ちょっと遠くへ行きたくなるものだ。 今回は土日休みに有給を添えて、鹿児島を目指してみた。

鹿児島へ、気分転換の旅

羽田空港のラウンジ

羽田空港のラウンジにも寄ってみたが、人口密度が高めで、どうも落ち着かない。 唯一の救いは、野菜ジュースが飲み放題なことくらいか。

飛行機からの景色

最近、働きすぎて疲れていたこともあり、今回は思い切って PC を家に置いてきた。 スマホもできるだけ控えめにして、デジタルデトックスをテーマにした旅路。

まぐろの町でのランチ

まぐろの館

鹿児島空港でレンタカーを借り、慣れない車のエンジンをかける。 九州自動車道を南から北へ走り抜け、目指したのは北薩の地。 まずは腹ごしらえと、いちき串木野市の「まぐろの館」へ向かった。

この町、実は「まぐろの町」として知られている。 遠洋まぐろ漁船の船籍数が日本一らしい。 調べると、まぐろラーメンという変わったラーメンも有名らしいが、今回はシンプルにまぐろ丼が食べたかったのである。

まぐろ白身丼

オーダーしたのは「まぐろ白身丼」。その価格、なんと 1,300 円。 東京だと倍近くするかもしれない。 旅行に来ているのにそんなことを考えてしまうのが悲しい。

味は書くまでもなく美味しかった。鹿児島の甘い醤油がまぐろと良く合う。 これだけで、もうすでに旅に出た甲斐があった気がする。

猫だらけの照島神社

照島神社

食事の後、近くの吹上浜を散歩してみた。 砂浜を歩いていると、その先に「照島神社」という小さな神社を発見。 せっかくだからと立ち寄ってみると――そこは、猫好きにとっての天国だった。

猫
猫
猫
猫
猫
猫
猫
0 / 0

なんと、境内には野良猫(地域猫)が大量発生。 猫たちは人に慣れていて、こちらが近づいても微動だにしない。 その愛らしい姿につい足を止め、無心で眺める。時間が流れる。

猫

神社を後にしても猫との遭遇は続き、外でも何匹も発見。 この日だけで 10 匹以上の猫たちに会うことができた。 今年分の猫運はここで使い果たしたかもしれない。

静寂の串木野サンセットパーク

串木野サンセットパーク

夕陽が沈むころ、串木野サンセットパークへ向かった。 名前は立派だけれど、駐車場はたったの 2 台分。 トイレも自販機もなく、そこにあるのは海と小さなベンチだけ。

海と夕陽

しかし、そのシンプルさがこの場所の魅力なのかもしれない。 遮るものが一切ない広い視界に、ただ海と夕陽が広がる。 太陽がゆっくりと沈んでいく光景を、何も考えずに眺めるだけ。 その時間は、どこか特別で、どこまでも静かだった。

念願の鶏刺し

鶏刺し
焼肉用の鶏
鶏の炭火焼き
芋焼酎
焼酎のメニュー
0 / 0

夕食には、居酒屋「薩摩鶏本舗とり魂」を訪れた。 この旅の楽しみのひとつは、鹿児島ならではの「鶏刺し」を味わうこと。

新鮮な鶏肉を生で楽しむ鶏刺しは、特別な処理が必要なため東京ではなかなか食べられない。 しかし、鹿児島ではスーパーで普通に売られているという事実に驚かされた。 それほどこの地では、新鮮な鶏肉が日常の一部として根付いているのだろう。

運ばれてきた鶏刺しは、噛み締めるたびに驚くほど柔らかくジューシーな味わい。 鶏本来の甘みと旨味が口いっぱいに広がり、思わず感動してしまった。

合わせたのは地元の芋焼酎。自分で水割りを作るスタイルは、濃さや水の量を自由に調整できるのでありがたい。 鶏料理の濃厚な味わいと、まろやかで香り高い芋焼酎の組み合わせは、期待以上の相性だった。

薩摩の里でのひととき

薩摩の里の部屋

1 泊目は市比野温泉(薩摩川内市)の旅館「薩摩の里」に泊まった。 出迎えてくれたのはアメリカ人の女将。 冗談を挟みながらも表情はいたって真剣で、そのギャップが妙にクセになる面白さがあった。

温泉の泉質はアルカリ性単純温泉。 泉質としては珍しいものではないが、pH 値が 9.8 とかなり高めで、湯に触れた瞬間から肌がぬるっとする。 加えて、鹿児島の温泉らしくしっかり熱い。42 ~ 44℃ ほどだろうか。 せっかくなので何度も出たり入ったりしていたら、気づけばのぼせていた。 温泉はほどほどが肝心らしい。

2 日目は鹿児島市内へ

鹿児島といえば桜島、そして桜島が見える観光地といえば仙巌園。 というわけで、素直に向かってみた。

到着してまずは昼食。 選んだのは奄美群島の郷土料理、鶏飯。 ご飯に鶏や薬味をのせ、だしをかけてさらさらと食べる。 シンプルながらも滋味深く、旅の胃袋にちょうど良い。

鶏飯

せっかくなので、お茶の飲み比べも注文。

お茶の飲み比べ

左から順に

  • 知覧茶
  • 桜島小みかん茶
  • かごしま紅茶
  • 深むし茶
  • 抹茶入緑茶

となっている。 個性的なラインナップだが、やはり最後に戻ってくるのは知覧茶。 派手さはないが、しっかり美味い。 結局のところ、定番にはそれだけの理由があるらしい。

胃袋を満たしたあとは、仙巌園を散策した。

仙巌園から見る桜島

噴火している桜島を真正面に望むこの庭園、写真で見るのとは景色の迫力が違う。 歴代の島津家当主にとって、この雄大な眺めが日常の一部だったのかと思うとなかなか贅沢な話だ。

園内には、反射炉や水力発電用のダムといった設備も残っており、当時としてはかなり進んだ技術を取り入れていたことがわかる。

そして、この仙巌園には「猫神社」なるものがある。

猫神社

1 日目に行った神社も猫まみれだったが、こちらは正式に「猫神」を祀っている。

猫神について

文禄・慶長の役で豊臣秀吉が朝鮮出兵を行ったが、その際に薩摩藩も出征した。 猫の瞳孔の開き具合で時刻を測れるという理由で 7 匹の猫も戦場へ。 結果、5 匹が戦死し、無事に帰還した 2 匹が祀られている(死んだ猫が祀られるのではないのか?)。

猫神社の絵馬

絵馬には、猫に関する願いごとがずらり。 読んでいるだけで面白い。

その後、島津家の別邸だった御殿の内部も見学。

謁見の間

和と洋が奇妙に融合していて、明治時代の訪れを感じる屋敷だった。 迎賓館としての役割もあり、ロシア皇帝ニコライ 2 世や英国国王エドワード 8 世が皇太子時代に訪れていたことは初めて知ったので驚いた。

帰る前に、名前が気になっていた「ぢゃんぼ餅」を食べてみることに。

海にかかる虹

大きいものを意味する jumbo が語源かと思っていたが、実際は「両棒」と書いて「ぢゃんぼ」と読むらしい。 しかも、「両棒」を「ぢゃんぼ」と読むのは、中国語からきているといわれており、中国語で「両」は「リャン」と発音し、これが鹿児島県で「ぢゃん」と訛って「ぢゃんぼ餅」と呼ばれたのではないかともいわれているそうだ。 英語なのか中国語なのか紛らわしい。

味は、砂糖醤油ダレがよく絡んだ柔らかい餅で、シンプルに美味しかった。 名前の由来は複雑でも、味は素直だ。

シェラトン鹿児島へ

仙巌園をあとにし、鹿児島唯一の百貨店である山形屋をぶらぶら。 ひととおりフロアを散策したあと、2 日目の宿 シェラトン鹿児島 へ向かった。

部屋に入った瞬間、思わず息をのむ。 窓の向こうには桜島と錦江湾が広がり、まるで額縁に収めた風景画のようであった。 これは早めに観光を切り上げてチェックインした甲斐があった。

シェラトン鹿児島の部屋

ホテルの高層階というのは、景色の良さと引き換えにどこか無機質な印象を受けることもあるが、ここは違った印象を受ける。 錦江湾の静かな水面と、噴火して煙を黙々と吐き出す桜島の荒々しさとの対比が面白くて、ずっと見ていた。

シェラトン鹿児島のラウンジ

今回の宿泊はクラブラウンジ利用可という特典が付いていたので、夕食はラウンジで済ませることにした。 軽食とお酒のラインナップは充実しており、ワインやシャンパンに加え、鹿児島らしく焼酎も豊富だった。

飲み放題の焼酎

でも、せっかく鹿児島に来たのだから、ホテルで夕食を済ませずに、近くの居酒屋に行けば良かったかなと少し後悔している。

山形屋で買った鶏刺し
山形屋で買った鶏刺し

部屋に戻り、ひと息ついたころ、冷蔵庫の中にある山形屋で買った戦利品を思い出す。 やっぱり、これが一番美味しい。

翌朝は少し早起きした。 どうしても、桜島と朝日の共演を見たかったからだ。 もっとも、東京に比べると鹿児島の日の出は 30 分ほど遅い。 早起きの人間ほど東へ行くべき。

桜島と朝焼け

朝日に照らされた桜島は、いつもより凛々しく見える。 ゆっくりと陽が昇り、街が目を覚ます。 静かで贅沢な時間だった。

急遽、霧島神宮へ

3 日目は霧島へと向かった。

当初は高千穂牧場でのんびりするつもりだったのだが、まさかの臨時休業。 こういうこともある。 そこで、予定を変更し霧島神宮へ行くことにした。

旅の醍醐味は、こういう偶然の展開があることかもしれない。

霧島神宮の入口

正直なところ、神社巡りに特別な興味があるわけではない。 だが、不思議なことに 行って後悔することはない。

神社というのは、ただの観光地ではなく、そこに立つだけで何かしらの感情を呼び起こすように設計されているのかもしれない。 普段は意識しないようなことまで考えさせられる。

信心深いタイプじゃないけれど、なぜか背筋が伸びる。

焼酎の銘柄

そんなことを考えながら境内を歩いていると、ふと目に入ったのが 奉納された焼酎の銘柄リスト。 しばらく眺めていると、飲んだことのある銘柄をいくつか見つけた。 なぜか、それだけで嬉しくなる。

霧島神宮の拝殿

せっかく来たのだからと、おみくじを引いてみることにした。 結果は小吉。 大吉なら素直に喜ぶし、大凶なら「逆にレアだ」とネタになる。 でも、小吉はどうにも微妙だ。

界霧島へ、旅の本命

霧島神宮で時間を潰し、いよいよ今回の旅のメインイベント「界霧島」へと向かう。

以前訪れた界アンジンの記事はこちら

界霧島の部屋からの景色
窓が大きく、シームレスに風景と繋がっている

これが部屋からの眺め。 うっすらとだが、遠くに桜島の姿が見える。 シェラトン鹿児島で見た桜島とはまた違う角度。 鹿児島にいる間、何度も桜島を眺めることになったが、場所によって表情が変わるのが面白い。

木製のケース
仕切りを移動可能。お茶やビールなどを運ぶ際に使ってほしいとのことだった

界霧島では、霧島茶がアメニティとして用意されている。 せっかくなので、部屋に置いてあった木製のケースにお茶を入れ、ビューテラスへと向かう。

界霧島から眺める桜島
うっすらと桜島が見える

ビューテラスからの景色は、まさに絶景。 霧島の自然に囲まれ、遠くには桜島が浮かぶ。 お茶を片手にただぼんやりと景色を眺めているだけで、心が洗われるようだ。

それにしても、こういう時に広角レンズが欲しくなる。 55mm のレンズでは目の前に広がる壮大な風景を切り取るのが難しい。

界霧島から眺める夕陽

そして、夕焼け。 空と海の境界が溶け合うようなグラデーションに、思わず息を呑む。

そして、お待ちかねの夕食。

夕食のメニュー
あくまき香煎揚げ南蛮地
焼酎の麹比べセット
煮物
宝楽盛り
宝楽盛り
天麩羅
しゃぶしゃぶ
黒豚
蕎麦
軽羹あんみつ
0 / 0

鹿児島らしく、芋焼酎のラインナップが豊富だったので、今回は麹比べセットを頼んでみた。 以下の焼酎が提供された。

麹の種類焼酎名
黒麹黒佐藤
白麹なかむら
黄麹萬膳庵

普段、焼酎を選ぶときに麹まで意識することはあまりなかったので、これは新鮮な体験だった。 特に黄麹を使った「萬膳庵」 は衝撃的だった。 黄麹は日本酒でよく使われるものだが、芋焼酎と組み合わせると、驚くほどフルーティーで飲みやすい。 東京で見かけたら是非買おうと思う。

料理も焼酎に合うものばかりで、特に黒豚のしゃぶしゃぶは絶品だった。 フォアグラ干し柿も今まで食べたことがない味で面白かった。

ビューテラスの焚き火
火を撮るのは難しい

食事の帰りに、もう一度ビューテラスへ寄ってみると、焚き火が灯されていた。 夜風に揺れる炎を見ていると、不思議と落ち着く。人間には火を見ると安心する DNA でも埋め込まれているのだろうか?

火を眺めながら、もう一杯焼酎を飲みたくなった。

食後の温泉タイム

夕食の後は、温泉へ向かうことにした。 界霧島の温泉エリアまではスロープカーで移動する。 なかなか珍しいスタイルだ。

温泉には浴槽によって源泉掛け流しのものと、そうでないものがあることに気がつく。 もちろん、源泉掛け流しの浴槽の湯口付近に陣取る。

泉質は可もなく不可もなくといった感じだが、ここでの真の主役は露天風呂の星空だった。 湯船のへりにタオルを置いて枕代わりにして仰向けになると、冗談みたいな数の星が広がっている。 普段は見えていないだけで、実際はこれだけの数の星が輝いていることに驚いた。 都会では決して見られない星の海に、しばらくの間、ただぼんやりと見惚れていた。

湯上がり処

温泉を堪能した後は、湯上がり処でのんびり。 アイスキャンディが食べ放題なのは嬉しい(1 本しか食べれなかったけど)。

薩摩スパークリング

部屋に戻ってから、売店で見つけた薩摩スパークリングを開けることにした。 これは焼酎をベースにした梅酒のスパークリングで、飲んでみるとちゃんと「薩摩」を感じさせる仕上がりになっていて美味しかった。

朝風呂からの朝食

朝の温泉

翌朝、朝食の前にもう一度温泉へ向かう。 昨夜の温泉では満天の星空を楽しんだが、今度は明るくなった景色の中で、また違った雰囲気を味わうことができた。 やっぱり、温泉付きの宿に泊まるなら夜風呂 & 朝風呂のセットは絶対外せない。

朝食のメニュー
朝食
さつま汁
0 / 0

朝食も安定の美味しさだった。 さつま揚げやさつま汁など鹿児島らしさを感じる料理も含まれており満足。

旅の締めくくり

最終日はあまり遠出せず、界霧島の近場でゆっくり過ごすことにした。 そこで向かったのが「道の駅 神話の里公園」。

道の駅という名前から、地元の特産品が並ぶこぢんまりとした施設を想像していたのだが、 着いてみると想像以上の広さで驚いた。

風のみえる丘

敷地内には展望台や遊具、リフト乗り場まであり、道の駅というよりはちょっとしたレジャー施設のような雰囲気。

その中でも目を引いたのが、頂上へと続く約 500 段の階段。 途中で息が上がりつつも、登り切るとリフト乗り場が待っていた。 チケットを購入し、今度は楽に頂上へ向かう。

リフト

頂上では霧島の雄大な景色を眺める。 そして、下りはスーパースライダーを選択。 これは長い滑り台のような乗り物で、一気に麓まで滑り降りられる。 この旅行で一番楽しかった瞬間かもしれない。

さいごに

今回の旅は、絶景と美味しい食べ物に恵まれた最高の時間だった。 東京に帰ると「なんでこんなビルに囲まれた狭い空間で日々をせかせかと過ごしているんだろう」と一瞬考える。 でも、こういう旅が特別に感じられるのは、そういった日常があるからこそであり、どちらか一方だけではきっとこの感動は生まれない(はずだと思いたい)。

佐藤セット

界霧島で飲んだ黒佐藤が忘れられず、帰宅後すぐに Amazon でポチった。 旅の記憶は時間とともに薄れていくものだけど、こうして日常の中に溶け込ませることで、ふとした瞬間に蘇る。 思い出の断片が増えるほど、日々の景色も少しずつ鮮やかになっていく気がする。